琉歌全集
琉歌全集 Oldest Ryukyuan poems
まどぅるみば うふぃん わすぃりゅら とぅみば またん うむかじぬ いみに みゆさ まどろめばおへも 忘れゆらとめば またも面影の 夢に見ゆさ ちょっとでも眠ったら、 忘れることがあろうかと思えば、 面影がまた 夢に見えるありさまである。 [琉歌全集(2143) 小橋川朝昇] |
はなぬ しま よぅてぃん なりし うやちょでぬ うむかじどぅ たちゅる あさん ゆさん 花の島をても 馴れし親兄弟の 面影ど立ちゆる 朝も夕さも 遊郭の沖島は、 華やかで面白い所であるが、故郷の親兄弟の 面影が朝夕思い出され、 恋しくて堪らない。 [標音評釈琉歌全集(2495) 読み人知らず] |
うみなしが やゆら きゆぬ つぃちしらや いつぃゅりん まさてぃ かじぬ ちゅらさ 思いなしがやゆら 今宵の月白や いつよりもまさて 影のきよらさ 今宵は名月だという 思いなしのためか、 月の光がいつもより きれいだ。 [琉歌全集(57) 、古今琉歌集(163) 屋比久朝義夫人] |
とぅちわなる まつぃぬ かわるくとぅ なさみ いつぃん はる くりば いるどぅ まさる ときはなる松の 変わることないさめ いつも春くれば 色どまさる ときわなる松は、 とこしえに変わることは無いだろう。 いつも春が来れば 緑の色がいよいよまさるばかりだ。 [琉歌全集(76) 北谷王子] |
あかぬ わかりじぬ うむかじや ぬかぬ なぐり ありあきぬ つぃんちに うちんかい うむくとぅや あまた はまぬ まさぐ あかぬ別れ路の 面影やのかぬ 名残り有明の 月に打ち向ひ 思事やあまた 浜のまさご |
飽きずに別れた時の 面影が立ち退かず、 その名残りの姿が有明の 月にも写っている。 色んな思いが湧き出て 浜の真砂のように尽きない。 [琉歌全集(148) 読み人知らず] |
くくるあてぃ みがき むにうちぬ かがみ むぬぬ かじ うつす たから でむぬ 心あてみがけ 胸中の鏡 物のかげうつす 宝だいもの 心して 胸中の鏡をみがけ、 物の善し悪しを写して見せてくれる 大事な宝だから。 [琉歌全集(265) 、古今琉歌集(973) 義村王子] |
たゆい うすかじぬ ふち まわし まわし とぅない さく うみぬ にえぃぬ しゅらしゃ たよりおす風の 吹きまはしまはし 隣咲く梅の 匂のしほらしや 隣りに梅が咲いたという便りでもするように、 時時吹いて来る微風がもたらす梅の香は、 誠に奥ゆかしいものである。 [琉歌全集(1426) 、古今琉歌集(63) 奥里親雲上] |
ふゆる はるさみぬ すみなしが しちゃら にわぬ いとぅやじぬ いるぬ まさてぃ 降ゆる春雨の 染めなしがしちやら 庭の糸柳の 色のまさて 春雨が 染めなしたのであろうか、 庭の糸柳の色が、 一段と緑の色が濃くなったようである。 [琉歌全集(1459) 高良睦輝] |
ふゆぬ しらゆちぬ いるに まぢりてぃん かくりねぬ むぬや はなぬ によぅい 冬の白雪の 色にまぎれても かくれないぬものや 花の匂 万物が冬の白雪の 色にまぎれても、 かくれないものは 花の匂である。 [琉歌全集(1587)護得久朝置] |
るくしちじゅ なてぃん とぅし ゆでぃどぅ しゆる いちゃしがな ちむや いつぃん わらび 六七十なても 年よでど知ゆる いきやしがな肝や いつもわらべ 六七十歳になっても、 年を数えてみて初めて自分が年寄りになったことを知るが、 しかし心は いつまでもどうかして童でありたい。 |