勘所
勘所 Position
◯は♭の表記
高音部
左手の指で絃を押す圧点。三線、三味線、一弦琴、二弦琴などの弦楽器で、絃を押えて音高(音調)を定める位置 (ポジション) のことで、ツボとも言う。楽器、種目、流派によって勘所のそれぞれに特定の呼称がある。三線は特に、二揚げ、三下げの場合、尺や七の音は本調子の時より半音高い。また、曲によっても微妙に動く。
イ乙、イ老、イ下老、イ上、イ中、イ尺、伍、イ六、イ七の読み方は「いおつ」、「いろう」のように「い」をつけて呼ぶ。また、曲によっては「ロ五」、「ロ尺」が出てくるものもあるが、これらは「こうご」、「こうしゃく」のように読む。
• | 打音(うちうとぅ) 絃を弾かずに、左手の指で絃を打って音を出す。工工四の大文字の時はきちんと打って音を出すが、小文字の時は、打つというより押さえて音を小さく出す。工工四で「丶」の記号がつく。 |
• | 掛音(かきうとぅ) 絃を下から上にひっかけるように弾く奏法で、早弾きの場合は「掛弾き」とも言う。工工四で「¬」の記号がつく。 |
• | 掻音(かちうとぅ) 左指で絃を掻くようにして音を出す。工工四で「レ」の記号がつく。 |
• | 打抜音(うちぬじうとぅ) 弦を左指で打ち、すぐに離す奏法で、打音とはしっかり区別をつける。工工四で「 」の記号がつく。 |
• | 開音(あきうとぅ) 押さえていた弦を離して微かな音をたてる。 |
• | 小弾 (くーばんち) 工工四で「合」「四」「工」と小文字で表記し、小さく弱く弾く。 |
• | 二弾(たーちばんち) 二本の弦を同時に弾いて、和音を出す。工工四で「 | 」の記号がつく。 |
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列音(ちりびち) 工工四の記号の右側に線を引いてつなげてある音を同時に出す弾き方。二つか三つの絃を同時に弾きならす(連譜)。工工四で「 | 」の記号がつく。 |
• | 早弾き 早弾きにも種々あるが、ふたつ弾きとか、二丁弾きと呼ばれる弾き方が一般的である。リズム良くタターン、タターンと跳ねるように弾く。 カチャーシーの曲などの弾き方を早弾きと言う。 |
• | 尺位 人差し指で勘所「下老、尺、七」を押さえる左手の位置のこと。このとき「九」を薬指で押さえてよいとする流派もある。 |
• | 上位 人差し指で勘所「乙、上、五」を押さえる基本的な左手の位置。 |
• | 中位(中弾き) 人差し指で勘所「老、中、六」を弾くようにする左手の位置のこと。したがって、「下老、尺、七」は中指で、「下尺、八」は小指で押さえることになる。 *指位(弦位)記号 ── 左手が上位から中位に移る時は工工四で「㊀」、「㊁」、「㊃」の記号がつく。 |
• | 吟位記号 三線を鳴らす位置・歌の音高が変わる位置。工工四で黒点「・」の記号がつく。 |
• | 薬指 三線の勘所を押さえる指は人差し指、中指、小指で、薬指は使わない。しかし、流派や研究所によっては、尺位の位置の時に勘所「九」を、「イ尺」を人差し指で押さえる位置の時に「イ乙、イ上、イ五」 を薬指で押さえてよいするところもある。必ず小指しか使わせないところもある。 |
• | 待ち拍子(弦を弾かない) ── 「〇」 |
例)稲まづん節
【一拍子八分一厘脉 凡て二百六十拍子 所要時間約三分五十秒】 |
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• | 一拍子八分一厘脉 「脉」は「脈」すなわち、脈拍のことである。 八分一厘は、脈拍を「1」とした時の所要時間すなわち、1マスに要する時間が鼓動の0.81=81%という意味で、脈拍よりもスピードが速い。 |
• | 凡て二百六十拍子 歌持(前奏)の繰り返しや2番以上の歌詞を含んでいない工工四のマスは260個、1マスは1拍子であるので、全部で260マス、つまり260拍子になる。 |
• | メトロノーム 野村流工工四では一分間の脈拍数は72回を基準に曲の速度(一分間に何拍か)を計算する。 72÷0.81=89拍子 |
• | 所要時間約三分五十秒 二百六十拍子を一拍子八分一厘脉のスピードで演奏すると、約三分五十秒かかるということである。曲の速度「89」が算出されているので、それを利用すると 260÷89=2.92 2.92分=3分32秒、およそ三分五十秒になる。 |
カンヒザクラ(寒緋桜)